万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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湯原王(ゆはらのおほきみ)の娘子(をとめ)に贈れる歌二首 志貴皇子(しきのみこ)の子なり

表辺(うはへ)なきものかも人はしかばかり遠き家路(いへぢ)を還(かへ)す思へば

巻四(六三一)
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不愛想なものですね、人は。泊めても下さらずこんなに遠い家路を還されるとは…
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この歌は湯原王(ゆはらのおほきみ)が詠んだ二首の恋歌の内のひとつ。
湯原王は志貴皇子(しきのみこ)の子で、天智天皇(てんぢてんわう)の孫になります。
志貴皇子やその子たちは壬申の乱での敗北者側の皇子として、朝廷内での高い身分などは求めず風流人としてひたすらに無欲な生き方を貫くことで生き残る道を選んだようですが、湯原王もまたそんな一人でした。

この歌はそんな湯原王が旅先の地方で出会った娘子に贈ったとされる恋歌ですが、ここから娘子との歌のやり取りが十二首も続く小説的な構成の連作となっています。
ただ、はっきりとしたことはわからないのですが湯原王が地方に赴任した記録などは残っておらず、あるいはこれらの歌はすべて湯原王がひとりで詠んだ架空の恋歌だった可能性も高いようですね。

とにもかくにもこの歌では「不愛想なものですね、人は。泊めても下さらずこんなに遠い家路を還されるとは…」と、せっかく娘子の家を訪ねて行ったにもかかわらず泊めてももらえず追い返される男の切ない恋が詠われています。
せっかく訪ねて行ったにもかかわらず泊めてももらえずに還らなければいけない帰路は、男にとっては実際の距離以上に遠く辛いものとして感じられたでしょうね。

これらの歌がもし架空の恋歌だったとしても、その根底にはきっと下地になった湯原王の実際の恋の経験などがあったのではないでしょうか。
そんな切ない恋を経験してきた万葉時代の男たちの姿まで目に浮かんでくるような魅力的な一首のようにも思います。


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万葉集巻四の他の歌はこちらから。
万葉集巻四


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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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