万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
（解説：黒路よしひろ）

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石川朝臣広成（ひろなり）の歌一首　後に姓高円朝臣（かばねたかまとのあそみ）の氏（いぢ）を賜へり

家人（いへびと）に恋ひ過ぎめやもかはづ鳴く泉（いづみ）の里に年の歴（へ）ぬれば

巻四（六九六）
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家に残してきた妻を恋う気持ちは薄れたりするものだろか。蛙鳴く泉の里に年を重ねて仕えていれば…
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この歌は石川朝臣広成（いしかはのあそみひろなり）が家に残してきた妻を思って詠んだ一首。
題詞によればこの後、広成は高円姓を賜って高円朝臣広成（たかまとのあそみひろなり）となったようですね。
「泉の里」は京都府相楽郡木津町・加茂町の木津川沿いの地で、後の恭仁京のあたり。

この歌は広成がそんな泉の里に遣わされていたときに平城京に残してきた妻を思って詠んだものですが、「家に残してきた妻を恋う気持ちは薄れたりするものだろか。蛙鳴く泉の里に年を重ねて仕えていれば…」と、妻と離れて暮らす寂しさを詠っています。
「年を重ねて仕えていれば妻を思う気持ちも薄れるだろうか…」と問いかけてはいますが、これはもちろん「決してそのようなことはないだろう」との思いが後に続くわけですね。

そんな、京を離れてひとり暮らさねばならなくなった広成の妻を恋う気持ちがよく表れている一首のように思います。


京都府木津川市の恭仁京跡。
泉の里もこの近くにあったのでしょう。

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万葉集巻四

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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊＆別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの４冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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