万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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大伴宿禰家持の久邇京(くにのみやこ)より坂上大嬢に贈れる歌五首
人眼(ひとめ)多み逢はなくのみそ情(こころ)さへ妹を忘れてわが思はなくに
巻四(七七〇)
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人目が多いので逢わないだけなのですよ。心まであなたを忘れているわけではないのです。
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この歌は新都である久邇京(くにのみやこ)にいた大伴宿禰家持(おほとものすくねやかもち)が奈良の平城京に残っていた大伴坂上大嬢(おほとものさかのうへのおほをとめ)に贈った五首の相聞歌の内のひとつ。
家持が聖武天皇に従って久邇京へ来て以来、坂上大嬢と思うように逢えない日々が続いていたのでしょう。
「人目が多いので逢わないだけなのですよ。心まであなたを忘れているわけではないのです。」との、なんとも言い訳じみた内容ですね。
久邇京と平城京の距離ならば馬を駆ければ逢いに行けないこともないのでしょうが、それではどうしても人目についてしまいます。
この時代の恋は「秘め事」であり、久邇京に居るはずの家持が平城京に居るところを頻繁に人に見られてはやはり噂が立ってしまって問題だったのでしょうね。
大嬢に逢いには行きたいけれど人目には付きたくない…
そんな家持の悩める心がよく表れている一首ではないでしょうか。
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万葉集巻四
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価637円〜〜1101円(税込み参考価格)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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