万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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ぬばたまの昨日(きそ)は還(かへ)しつ今夜(こよひ)だへわれを還すな路の長道(ながて)を

巻四(七八一)
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まっくらな夜道を昨日はお還しになりましたね。今夜までも私を還さないでくださいね。長い道のりを
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この歌も久邇京(くにのみやこ)にいる大伴宿禰家持(おほとものすくねやかもち)が、平城京の紀女郎(きのいらつめ)に贈った五首の相聞歌のうちの一首。
「まっくらな夜道を昨日はお還しになりましたね。今夜までも私を還さないでくださいね。長い道のりを」と、こちらの歌も恋歌の形を取った戯れの歌となっています。

この時代の男女の逢瀬は秘め事として人目のつかない夜に男が女の家に通って、日の出る夜明け前に帰っていくのが普通でした。
ですから、まっくらな夜道を還されるというのは女の家に迎え入れられずに逢えずに帰ったという意味ですが、家持と紀女郎はそもそも恋人同士のような男女の関係ではなかったので紀女郎にはこの歌も家持の戯れであることがすぐに理解できるわけです。
つまり、前日に家持は紀女郎の家を訪ねてなどいないわけですが、逆に後半の「今夜までも私を還さないでくださいね。長い道のりを」というのは「本日、お伺いいたします」という意味を込めての挨拶歌であったのかも知れませんね。(もちろんその場合には、歌だけでなく同封の手紙かあるいは使いの使者にはっきりと来訪を言伝させたはずですが。)

家持が紀女郎と交したこれらの相聞歌を読むと、万葉の時代の人々も意外にユーモアにあふれた人たちであったことが感じられるかと思います。
政治的な策謀や陰謀に巻き込まれた皇族たちの悲劇の歌から、このような個人同士のユーモアにあふれる交流の歌までを広く含む万葉集の魅力にあらためて気づかされますね。
以上、大伴家持が紀女郎に贈った相聞歌でした。


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万葉集巻四の他の歌はこちらから。
万葉集巻四


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価637円〜〜1101円(税込み参考価格)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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