万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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梅の花咲きて散りなば桜花継て咲くべくなりにてあらず
薬師張氏福子(くすりしちやうしのふくし)
巻五(八二九)
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梅の花が咲いて散ってしまったなら桜の花が継いで咲きそうになっているではないか
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この歌も大宰師の大伴旅人(おほとものたびと)の邸宅で開かれた宴席で詠まれた「梅花(うめのはな)の歌」三十二首の歌のうちのひとつ。
「薬師(くすりし)」は医師のことで、「張氏福子(ちやうしのふくし)」は「張福子(ちやうのふくし)」のことでしょうか。
歌の内容は「梅の花が咲いて散ってしまったなら桜の花が継いで咲きそうになっているではないか」と、梅の花に継いで桜の花もまた開花を迎えようとしている状態を詠っています。
これまでの第二集団の歌は第一集団で詠まれた歌を念頭に置いて詠まれたものが多かったですが、ここで今までに詠われなかった桜の花を出してきたことでこの梅を愛でる宴の歌の世界にまた別の広がりを与えたわけですね。
この歌をひとつのきっかけとしてか、第三集団以降の歌はさらに自由な発想の広がりを見せていきます。
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万葉集巻五の他の歌はこちらから。
万葉集巻五
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価637円〜〜1101円(税込み参考価格)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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