万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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春されば吾家(わぎへ)の里の川門(かはと)には鮎子(あゆこ)さ走(ばし)る君待ちがてに
巻五(八五九)
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春になればわたしが住む里の川の渡し場に鮎の子が泳ぎ回ります。あなたを待ちかねて。
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この歌も「松浦河に遊ぶ」と題された一篇の歌群の一首で、主人公の男が娘子に贈った歌に娘子がさらに返した三首の歌のうちのひとつ。
娘子の詠んだ歌となっていますが、この歌も松浦の地を訪れた大伴旅人(おほとものたびと)たちが宴の席で詠んだもので、大宰府の官人か、あるいは宴席に同席した遊女(うかれめ)などが娘子役を演じて詠んだ歌でなのでしょう。
歌の内容は「春になればわたしが住む里の川の渡し場に鮎の子が跳ね回ります。あなたを待ちかねて。」と、男の来訪を待ちわびる自身の恋心を跳ね回る若鮎に譬えて詠った一首ですね。
「川門(かはと)」は川などの渡し場のことですが、このような季節の若鮎の姿をありありと歌に詠み込めるのは、この歌の作者がこの地域での生活の長い人物だったからでしょうか。
恋の戯れ歌の中に自然の情景をも詠み込んで、この歌もなかなかに魅力ある一首のように感じます。
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万葉集巻五
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価637円〜〜1145円(税別)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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