万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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書殿(ふみどの)にして、餞酒(うまのはなむけ)せし日の倭歌(やまとうた)四首

天(あま)飛ぶや鳥にもがもや都まで送り申(まを)して飛び帰るもの

巻五(八七六)
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天を飛ぶ鳥になりたいものです。そうしたら都までお送りして行ってまた飛び帰って来るものを
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この歌は大宰師としての勤めを終えて奈良の都へ帰ることになった大伴旅人(おほとものたびと)を祝う宴の席で、山上憶良(やまのうへのおくら)が詠んだ四首の歌のうちのひとつ。
題詞の「書殿(ふみどの)」は大宰府の図書寮の建物でしょうか。

大宰師として筑紫の国に派遣されていた大伴旅人も念願が叶ってようやく奈良の都へと帰れることとなりました。
この一首はそんな旅人の帰郷決定を祝う宴の席で憶良が詠んだものですが、「天を飛ぶ鳥になりたいものです。そうしたら都までお送りして行ってまた飛び帰って来るものを」と、旅人との別れの寂しさを詠っています。
自分がもし鳥のように自由に空を飛べたなら…との想像は現代人なら誰しも一度はしたことがあるかと思いますが、千数百年前の時代の憶良も同じように想像して、旅人を都まで送って行って飛んで帰ってきたいと詠っているのは非常に興味深いですよね。

そんな、旅人との別れの寂しさにせめて奈良の都まで道中を共にして送ってゆきたいとの憶良の思いがよく表れている一首のようにも感じます。

ちなみに、大宰師の任期は本来は五年ほどなのですが旅人は三年ほどで帰京したようですね。
これは老体の旅人の体調の悪化が一つの原因だったのでしょうか。
実際、旅人は帰京した翌年に亡くなるのですが、憶良にとっても旅人にとってもこの別れが永遠のものになるとはこの時はまだ双方ともに思ってもいなかったのでしょう。


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万葉集巻五


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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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