万葉集入門
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現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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雑歌

天(あめ)を詠(よ)める

天(あめ)の海に雲の波立ち月の船星の林に漕(こ)ぎ隠る見ゆ

右の一首は、柿本朝臣人麿(かきのもとのあそみひとまろ)の歌集に出づ

巻七(一〇六八)
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天の海に雲の波が立ち月の船が星の林に漕ぎ隠れていくのが見えるよ
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この歌は万葉集巻七の冒頭に置かれた有名な一首。
万葉集巻七は全巻雑歌の巻で、この歌は左注によると、柿本朝臣人麿(かきのもとのあそみひとまろ)の歌集に収録されていた歌だそうです。
柿本朝臣人麿歌集は人麿が個人的に歌を収録した歌集で、万葉集の出来る以前に存在していた歌集ですが残念ながら現存していません。

歌の内容は「天の海に雲の波が立ち月の船が星の林に漕ぎ隠れていくのが見えるよ」と、「天」を「海」、「雲」を「波」、「月」を「船」、「星」を「林」に見立てて詠んだ、なんとも壮大な一首ですよね。
このような趣向は漢詩などによくみられるもので、おそらくこの歌も大陸から伝わった漢詩の影響を強く受けてのものだったのでしょう。

柿本人麿歌集には人麿自身の歌の他にも人麿が朝廷で集めた歌や当時の伝誦歌などが収録されていたのではないかと推測されるので、この万葉集巻七(一〇六八)の歌も柿本朝臣人麿歌集に収録されていたからという理由だけで人麿の作であるとは断言できないようです。

ただ、歌の内容が漢詩の影響を受けていることなどから当時の最先端の文化に触れる機会のあった人物の詠んだ歌であると想像され、やはり宮廷歌人であった柿本人麿自身の作とみるのが妥当なのかも知れませんね。

題詞に「天を詠める」とありますが、これはこの歌だけのものでなくここから巻七(一〇八九)の歌まで、天の月を詠んだ歌が続きます。


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万葉集巻七の他の歌はこちらから。
万葉集巻七


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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