万葉集入門
現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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皇祖神(すめろき)の神の宮人冬薯蕷葛(みやひとところづら)いや常(とこ)しくにわれかへり見む
巻七(一一三三)
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皇祖の神に仕える宮人のわたしは冬薯蕷の葛のように末永く吉野を繰り返し見て讃えよう
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この歌も万葉集巻七の「芳野にして作れる」と分類された歌のうちのひとつで、作者は不明です。
「皇祖神(すめろき)の神の宮人」と言っていることから、おそらくは公務で吉野を訪れた朝廷の臣の一人だったのでしょう。
歌の内容は「皇祖の神に仕える宮人のわたしは冬薯蕷の葛のように末永く吉野を繰り返し見て讃えよう」と、この歌もまた吉野を賛美する土地讃めの一首となっています。
「冬薯蕷(ところ)」は冬に採取して食べる山芋の一種。
そんな冬薯蕷の長い葛(ツル)のように末永く吉野を繰り返し見て讃えよう、と冬薯蕷の葛の長さを「末永く」を引き出す序詞として使っているわけですね。
宮人として讃えていることからおそらくは吉野の宮滝離宮を褒め称える歌だったのだろうと思いますが、冬薯蕷を序に使った表現の面白いなかなかに洗練された一首のように感じます。
吉野の風景。
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万葉集巻七
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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