万葉集入門
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現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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山背(やましろ)にして作れる

宇治川は淀瀬無(よどせな)からし網代人(あじろひと)舟呼(よ)ばふ声をちこち聞ゆ

巻七(一一三五)
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宇治川は緩やかな淀んだ瀬がないらしい。網代をかける漁師の船を呼び交す声があちこちから聞こえるよ
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この歌は「山背(やましろ)にして作れる」と題された歌の一首で作者は不明となっています。
このお題自体は編者が収録時に分類の為につけたもので、それぞれの歌の作者は別なのでしょう。
「山城」は「山城」で、現在の京都府のこと。
「宇治川(うぢがは)」は京都府宇治市を流れる川。

そんな「宇治川は緩やかな淀んだ瀬がないらしい。網代をかける漁師の船を呼び交す声があちこちから聞こえるよ」と、網代を仕掛ける漁師の様子から宇治川の流れの早さを詠った一首となっています。
「網代(あじろ)」は竹や木の網を張って魚を捕える仕掛けのことですが、舟を呼び交すということは歩いて渡れる淀瀬がないということなのでしょうね。
単純に情景歌としても鑑賞できる一首ですが、この歌も漁師たちの声を通して宇治川の豊かさと雄大さを詠った土地讃めの要素の強い一首といえるでしょう。

宇治川の川音と網代を仕掛けようと舟に指示を出す万葉時代の漁師たちの賑やかな声が、現代にまで聞こえてくるようなそんな歌のように思います。


京都府宇治市の朝霧橋の側にあるこの歌の歌碑。
宇治神社のすぐ傍です。



歌の解説。



宇治川と朝霧橋。



朝霧橋から見た宇治川の流れ。


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万葉集巻七の他の歌はこちらから。
万葉集巻七


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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