万葉集入門
現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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白栲(しろたへ)ににほふ信土(まつち)の山川にわが馬なづむ家恋ふらしも
巻七(一一九二)
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白く映える真土の信土山の山川に私の馬は行きなずむよ。妻が家で恋しがっているらしい。
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この歌は京からの旅人が現在の和歌山県橋本市隅田にある真土山を通ったときに詠んだ一首。
信土山(まつちやま)は真土山のことで、JR和歌山線の隅田駅の東北に広がる山一帯を真土山と呼ぶそうです。
そんな真土山の川を渡ろうとしたときに馬が難渋して進もうとしないのを「白く映える真土の信土山の山川に私の馬は行きなずむよ。妻が家で恋しがっているらしい。」と、京に残してきた家人(妻)が寂しがって引きとめているのだろうと旅人は想像したわけですね。
この時代の人々は、魂が肉体を離れることで人は死んでしまうと考えていました。
それゆえに旅人は旅の不安に飛散して散ってしまいそうになる魂を、家に残してきた妻を思い妻とこころを結び付けておくことで必死に現世に留めようとしたわけです。
同時に、家に残った妻は、夫の無事を祈る歌を詠んで夫の旅の無事を祈りました。
この歌もそんな旅先での、常に妻を思う旅人の心がよく表れている一首ですよね。
和歌山県橋本市の真土にある「飛び越し石」。
落合川を挟んで大和と紀伊国をこの飛び石が繋いでいます。
この歌を詠んだ旅人も馬でこのような場所を渡ろうとしたのでしょうか。
「飛び越し石」の解説板。
ここにこの歌のことも記されています。
「飛び越し石」の解説の中にこの歌とその想像の絵が描かれています。
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万葉集巻七
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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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