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万葉集入門
万葉集入門
現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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草香山(くさかやま)の歌一首

おし照る 難波(なには)を過ぎて うちなびく 草香の山を 夕暮に わが越え来れば 山も狭(せ)に 咲ける馬酔木(あしび)の あしからぬ 君を何時(いつ)しか 往きてはや見む

右の一首は、作者の微(いや)しきに依りて名字(な)を顕(あらは)さず。

巻八(一四二八)
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一面に日が照り輝く難波を通り過ぎて、平らになびく草香山を夕暮れに私が越えて来ると、山道も狭いほどに咲く馬酔木のように、悪しくなどないやさしいあなたにいつお会いできるだろうか、道を急いで早くお会いしたいものです
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この歌は、草香山(くさかやま)を詠んだ長歌です。
「おし照る」は「難波」にかかる枕詞。

左注によると、作者は賤しき身分ゆえに名前が伝えられなかったとあります。
なんだかひどい話のようにも思えますが、飛鳥・奈良時代には良民と賤民の区別があり明確な身分の区別がありました。
それゆえにこの歌のように伝誦の過程で作者名が失われて伝えられた歌もあったようですね。
逆に言えば、そんな身分の低い者の中にも当時、これほどの長歌を詠める人間がいたことに注目するべきなのかも知れません。

この歌の次に若宮年魚麿(わかみやのあゆまろ)が誦じた歌が続いていることから、この歌もまた年魚麿によって伝誦されたものでしょうか。

「草香山」は生駒越えの通路の山ですが、難波を過ぎてと詠われていることからこの歌の作者は難波から草香山を通って奈良の京へ向かっていたのでしょう。
そんな草香山の山道も狭いほどに馬酔木(あしび)が咲いていると詠っていますがこれは実景であると同時に、「あしび」から同音で「あしからぬ」を引き出す序詞(じょことば)でもあるわけですね。

「あしからぬ」は「悪(あ)しくない」ので「やさしい」といった感じの意味。
そんな「奈良の京にいるやさしいあなたに道を急いで早くお会いしたいものです」との思いが見事な表現で詠われている一首のように思います。


馬酔木(あしび)は現在の馬酔木(あせび)のこと。
葉や茎に毒があり馬が誤って食べると酔ったような足取りになることからこの名がついたといわれています。



春に咲く馬酔木の花。


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万葉集巻八の他の歌はこちらから。
万葉集巻八


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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