万葉集入門
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現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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山部宿禰赤人の歌一首

百済野(くだらの)の萩の古枝(ふるえ)に春待つと居りし鶯(うぐひす)鳴きにけむかも

巻八(一四三一)
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百済野の萩の古枝で春を待っていた鶯はもう鳴きはじめたかなあ
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この歌は山部宿禰赤人(やまべのすくねあかひと)の詠んだ一首です。
山部赤人は奈良時代を代表する宮廷歌人のひとり。

歌の内容は「百済野の萩の古枝で春を待っていた鶯はもう鳴きはじめたかなあ」と、百済の野の鶯に思いを馳せた一首となっています。
「百済野(くだらの)」は舒明十二年に造営された百済宮などがあった土地ですが、奈良時代には荒廃してしまって現在では場所の特定も出来ません。

ただ、山部赤人の居た頃にはまだ多少の宮の痕跡は残っていたのでしょうね。
「居りし鶯」とあるのは、赤人がかつて百済野を訪れたことがあってその時に鶯を見たからでしょうか。
そんな百済野の萩の古枝に留まっていた鶯はもう鳴きだした頃だろうかと、奈良の京にいる赤人が百済の野で見た鶯に思いを馳せながら春の訪れを待ち望んだ一首なのでしょう。


奈良県北葛城郡広陵町の百済寺にあるこの歌の歌碑。



歌碑の解説。



百済寺解説(奈良県北葛城郡広陵町)。
ただ、この場所が舒明天皇の百済宮であったのかどうかはかなり疑問があるようです。
(一説によると藤原京跡の東にある吉備池廃寺が百済宮であるとも…)



広陵町百済寺の三重塔(重要文化財)。
こちらは鎌倉時代中期の建築です。



広陵町の百済寺の横には公園が整備されています。
この地が赤人の詠んだ百済野であるのかはかなりあやしいところですが、この公園で長閑な風景を眺めながら赤人のこの歌を口ずさんでいると千数百年前の鶯の鳴き声が聞こえてくるようなそんな不思議な感覚もして、実際の百済野がどこであったのかなどの些細なことはどうでもよくなってくるようなそんな気もします(笑)



奈良県桜井市吉備にある吉備池。
この池の南の堤から出土した吉備廃寺遺跡が舒明天皇の造営した百済大寺(百済宮)であるとも…



吉備池の南東隅付近からは瓦片が多く出土しており、百済大寺の瓦を焼いた瓦窪とも推定されています。


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万葉集巻八


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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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