万葉集入門
現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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厚見王(あつみのおほきみ)の歌一首
蛙(かはず)鳴く甘奈備(かむなび)川に影見えて今か咲くらむ山吹の花
巻八(一四三五)
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カジカの鳴く甘奈備川に影を映して今ごろは咲いているだろうか山吹の花は
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この歌は厚見王(あつみのおほきみ)が甘奈備川の山吹に思いを馳せて詠んだ一首です。
厚見王については詳しいことは不明。
「甘奈備(かむなび)川」は、故郷の飛鳥川のことでしょうか。
そんな奈良の京にいる厚見王が「カジカの鳴く甘奈備川に影を映して今ごろは咲いているだろうか山吹の花は」と、飛鳥川に咲く山吹の花を思って詠んだ春の一首となっています。
「蛙(かはず)」はカエル類全般の総称ですが、この場合は「河鹿(かじか)」のことと思われます。
あるいは遷都後の奈良の京で、カジカの鳴く故郷の春の飛鳥川を懐かしんで詠んだ望郷の歌なのかも知れませんね。
故郷の飛鳥にもまた山吹の花の咲く春が到来しているだろうかとの、厚見王の繊細な心が感じられる一首のように思います。
山吹の花。
山吹は写真のような黄色い花を咲かせる春を代表する植物のひとつです。
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万葉集巻八
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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