万葉集入門
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現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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大伴家持の晩蝉(ひぐらし)の歌一首

隠(こも)りのみ居(を)ればいぶせみ慰(なぐさ)むと出で立ち聞けば来鳴く晩蝉(ひぐらし)

巻八(一四七九)
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隠ってばかりいると心がふさぐので気晴らしに外に出て耳を澄ますと、もう晩蝉がやって来て鳴いているよ。
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この歌は大伴家持(おおとものやかもち)が晩蝉(ひぐらし)を詠んだ一首です。
「晩蝉(ひぐらし)」は蝉のヒグラシのことで、夏か秋の明け方や夕暮れ時に「カナカナカナ…(あるいはキキキキキなどと聞こえることもあります)」と物憂げな声で鳴きます。

歌の内容は「隠ってばかりいると心がふさぐので気晴らしに外に出て耳を澄ますと、もう晩蝉がやって来て鳴いているよ。」と、そんな晩蝉の声に気づいた家持らしい一首ですね。
家持には鳥の鳴き声などの「音」に敏感な歌が多いのですが、この一首もまた晩蝉の鳴き声に心を留めた繊細な感性がよく表れているように思います。

「隠(こも)りのみ居(を)れば」とは、雨が降っているために外に出ることが出来ずに家に隠っていた(雨隠り)のでしょう。
万葉集の時代の人々は、雨は天から降る畏ろしい霊力を帯びたものとして、雨に濡れることを禁忌としていたようです。
とくに梅雨などの時期は家に隠って恋人に逢いに行くことすら躊躇ったようですね。

そんな雨隠りの気晴らしにと外に出て聞こえてきた晩蝉の声は、家持の心の慰めになったのかあるいは余計にもの憂くさせる声と聞こえたのか…


ヒグラシ。
ヒグラシは夏から秋にかけて、早朝や夕方に「カナカナカナ…」と物憂げな声で鳴きます。
距離によっては「キキキキキ…」や「ケケケケケ…」などとも聞こえ、林の中などで聞くと僕などは怪しげな妖精の声を聞いているような不思議な気分にもなります^^;


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万葉集巻八


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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