万葉集入門
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現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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山上臣憶良(やまのうへのおみおくら)の七夕(なぬかのよ)の歌十二首

天(あま)の川(かは)相向き立ちてわが恋ひし君来(き)ますなり紐(ひも)解き設(ま)けな
〔一(ある)は云はく、川に向ひて〕


右は、養老八年七月七日に、令(りやう)に応(こた)ふ。

巻八(一五一八)
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天の川に向かい立ってわたしが恋い慕っていたあなたが来られるようだ。紐を解いて待とう
〔一は云はく、川に向かって〕
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この歌は山上臣憶良(やまのうへのおみおくら)が七夕を詠んだ十二首の歌のうちのひとつ。
〔一は云はく、川に向かって〕は憶良自身による二句目の別案でしょうか。

七夕はもともとは大陸の風習ですが、それが日本の神を待つ「たなばたつめ」の信仰と合わさって、奈良時代以降に民間にも広がって行ったようですね。
この憶良たちが七夕を祝った頃が、まさにその始まりと言ったところでしょうか。

左注によると「養老八年七月七日に、令(りやう)に応(こた)ふ。」とありますが、これは首皇太子(後の聖武天皇)の命によって七夕の歌を詠んだとのことです。
(ちなみに養老八年は神亀元年なので、おそらくこの歌の左注の年は養老七年か六年の誤りかと思われます。)
この頃の憶良は東宮侍講として皇太子に仕えていたようなので、その時に皇太子主催の七夕の宴などがあったのでしょう。

そんな東宮侍講の憶良が皇太子に命じられて詠んだ七夕の歌ですが「天の川に向かい立ってわたしが恋い慕っていたあなたが来られるようだ。紐を解いて待とう」と、牽牛を待つ織姫の立場に立って詠んだなんとも大胆な一首ですよね。
「紐を解いて待とう」とは、もちろん織姫が服の紐を解いて待つ意味ですが、性に対して大らかであったこの時代とはいえ皇太子に献上する歌にこんな内容を詠んだ憶良の度胸には恐れ入ります(笑)

まあ、おそらくは宴の席での歌であり首皇太子も面白い戯れとして拍手喝采で楽しんだのでしょう。
そうでなかったのなら、万葉集にこうして残ることもなかったでしょうから…

そんな首皇太子と山上憶良の関係も想像できて、憶良の意外な一面も垣間見えるなんとも楽しい一首ですよね。


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万葉集巻八


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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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