万葉集入門
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現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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珠匣(たまくしげ)蘆城の川を今日見ては万代までに忘らえめやも

右の二首は、作者いまだ詳(つばひ)らかならず。

巻八(一五三一)
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珠匣の蘆城の川を今日見て後はいつまでも忘れることなどあるだろうか
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この歌も先の巻八(一五三〇)の歌と同じく、大宰府の官人たちが筑前国(つくしのみちのくのくに)の蘆城(あしき)の駅家(うまや)で宴を催したときに詠まれた二首の歌のうちのひとつ。
左注に「右の二首は、作者いまだ詳(つばひ)らかならず。」とあるように、この歌もまた作者名は不明となっています。
「珠匣(たまくしげ)」は「美しい櫛の箱」の意味で、この場合は「蘆城(あしき)」に懸る枕詞として使われています。

そんな「珠匣の蘆城の川を今日見て後はいつまでも忘れることなどあるだろうか」と、こちらも蘆城の川を讃えた土地讃めの一首ですね。
「今日見ては」と、初めて見たような語句になっていることから、この歌の作者もおそらくは巻八(一五三〇)の歌と同じく新任の大宰府の官人だったのでしょう。
これらの歌が詠まれた奈良時代にはもう歌の持つ呪術性もずいぶんと薄れていたようですが、それでもこの歌の作者たちのように新たな土地に赴任した者たちはその土地の神の加護を受ける歌を忘れずに詠んでいたのでしょうね。
このあたりは、普段あまり神を意識しない現在人が、旅行先などで旅の無事を祈って神社参りをしたりするなどの感覚にも似ているように思います。


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万葉集巻八


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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