万葉集入門
現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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縁達師(えんだちほふし)の歌一首
暮(よひ)に逢ひて朝面無(あしたおもな)み隠野(なばりの)の萩は散りにき黄葉早続(もみちはやつ)げ
巻八(一五三六)
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宵に男と逢って朝は恥ずかしさに顔を隠す隠野の萩は散ってしまった。黄葉よすぐに続け
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この歌は縁達師(えんだちほふし)の詠んだ一首です。
「縁達(えんだつ)」は僧名と思われ、「師(ほふし)」は敬称。
縁達師については詳しいことはなにもわかっていませんが、あるいは百済系の人物でしょうか。
「隠野(なばりの)」は「名張の野」のことで、現在の三重県名張市の野のこと。
歌の内容は「宵に男と逢って朝は恥ずかしさに顔を隠す隠野の萩は散ってしまった。黄葉よすぐに続け」と、名張の野の萩が散ったあとに黄葉も続いて色付けと詠った一首ですね。
「宵に男と逢って朝は恥ずかしさに顔を隠す」までは、「隠す」を意味する「隠(なば)り」の同音で「隠野(なばりの)」を引き出す序詞となっています。
つまりは実際には秋の萩と黄葉を詠っただけの内容なわけですが、このような序を持ってくることで歌に艶っぽさが出てなんとも魅力ある一首になっていますよね。
黄葉はカエデなどが秋に色づいた葉のこと。
万葉集の「こうよう」は「紅葉」ではなく「黄葉」を詠った歌がほとんどですが、これは奈良時代には中国大陸で黄色が好まれていた影響などもあり、赤色よりも黄色のほうが好まれたからのようです。
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万葉集巻八
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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