万葉集入門
現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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萩(はぎ)の花尾花葛花瞿麦(をばなくずばななでしこ)の花 女郎花(をみなへし)また藤袴(ふぢばかま) 朝貌(あさがほ)の花
その二
巻八(一五三八)
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萩の花、尾花、葛花、撫子の花 女郎花、また藤袴、朝顔の花
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この歌も先の巻八(一五三七)の歌と同じく、山上臣憶良(やまのうへのおみおくら)が秋の野の花を詠んだ二首のうちのひとつ。
巻八(一五三七)の歌では「秋の野に咲いている花を指折って数を数えれば次の七種類の花が美しい」と詠っていましたが、こちらの巻八(一五三八)の歌ではそれに継いで「萩の花、尾花、葛花、撫子の花 女郎花、また藤袴、朝顔の花」を秋の七草花として挙げています。
憶良がこの歌で挙げた七草花は現在にも「秋の七草」として伝わっていますが、その独自の選花は興味深いものがありますね。
「萩(はぎ)」は万葉集にも四季の花すべてを通じてももっとも多く詠まれている花で、憶良もさすがにこの花は外すことが出来ないと思ったのでしょう。
「尾花(をばな)」はススキのことで、花としては地味ですがたしかに秋を代表する植物と言えますね。
「葛(くず)花」はちょっと意外に感じられる方もいらっしゃるかも知れませんが、秋になると葛の葉の間から大きな赤紫の花を覗かせて咲く花で、この花を選んだ憶良の感性は見事だと僕は思います。
「撫子(なでしこ)」はカワラナデシコのことでこの花もまた、日本女性にも譬えられる可憐な花で、秋の七草の選定には欠かせませんよね。
おなじく、「女郎花(をみなへし)」も万葉集にも多く詠まれており、古来、日本人には馴染みの深い秋の花です。
「藤袴(ふじばかま)」も、その上品なたたずまいで欠かすことの出来ない秋の草花と言えるでしょう。
「朝顔(あさがほ)」は、現在でいう「アサガオ」は万葉の時代にはまだ日本に持ち込まれていなかったと思われ、これは「桔梗(ききょう)」のことだろうといわれています。
憶良のこの歌は「調べ(リズム)」もよく、非常に覚えやすい歌となっていますので、みなさんもぜひこの歌で秋の七草を覚えてみてくださいね。
奈良市の春日大社参道にあるこの歌の歌碑。
東大寺大仏殿前交差点から南東方向に斜めに春日大社に向かって進む参道の途中に巻八(一五三七)の歌碑と並んで建っています。
萩(はぎ)の花。
尾花(をばな)。
葛花(くずばな)。
撫子(なでしこ)の花。
女郎花(をみなへし)。
また藤袴(ふじばかま)。
朝顔の花。
以上、山上憶良が選んだ秋の七草花の紹介でした。
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万葉集巻八
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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