万葉集入門
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現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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湯原王の鳴く鹿の歌一首

秋萩の散りのまがひに呼び立てて鳴くなる鹿の声の遙(はる)けさ

巻八(一五五〇)
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秋萩の散りかう中にまぎれて妻を呼んで鳴く鹿の声の遙かなことだなあ
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この歌は湯原王(ゆはらのおほきみ)が鳴く鹿を詠んだ一首です。
湯原王は志貴皇子(しきのみこ)の子で、天智天皇(てんちてんわう)の孫。

歌の内容は「秋萩の散りかう中にまぎれて妻を呼んで鳴く鹿の声の遙かなことだなあ」と、散ってゆく秋萩の花の中に入り混じって聞こえる妻を呼ぶ鹿の声を詠った一首となっています。
万葉集の歌で鹿などが「妻を呼ぶ」という場合は、妻となる相手を探して鳴いているという意味になります。
ですので、この歌の男鹿も、妻を求めて秋萩の散る山の中で鳴いているわけですね。

同時に、鹿の妻であるとされる萩の花(鹿がつねに萩の花に寄り添うことから)の散ってゆくのを惜しんで鳴いているのだとの気持ちも含まれているのかも知れませんね。
そんな移りゆく秋の情景を詠って、なんともしんみりとした魅力の一首のように思います。


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万葉集巻八


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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