万葉集入門
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(解説:黒路よしひろ)
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忌部首黒麿(いむべのおびとくろまろ)の歌一首
秋田刈る仮廬(かりほ)もいまだ壊(こぼ)たねば雁(かり)が音(ね)寒し霜も置きぬがに
巻八(一五五六)
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秋の田を刈るための廬もまだ取り壊していないのにもう雁が寒々と鳴いているよ。霜も置きそうなほどに
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この歌は忌部首黒麿(いむべのおびとくろまろ)の詠んだ一首です。
忌部首黒麿は従五位下の官吏。
歌の内容は「秋の田を刈るための廬もまだ取り壊していないのにもう雁が寒々と鳴いているよ。霜も置きそうなほどに」と、稲刈りの済んだばかりの空に雁がもう鳴き渡って行く秋の寒さを詠った一首となっています。
「霜も置きそうなほどに」との結句が、その寒さをよく物語っているように思いますよね。
「秋田刈る仮廬(かりほ)」とは、稲の収穫時に宿るために作った仮の小屋のこと。
黒麿のような官吏が実際に稲刈りをすることはないので、これは秋の田の仮廬を見て詠んだのでしょう。
「仮廬」は稲刈りが済むと取り壊すのが普通ですが、そんな「仮廬」をまだ取り壊してもいないということは稲刈りが済んだ直後かあるいはまだ稲刈りの途中なのでしょうね。
「雁」はハクチョウよりも小さく鴨よりも大きいマガンなどの水鳥の総称ですが、そんな本格的な秋の到来を告げて飛来する雁の鳴き声を詠ってこの歌もまた季節の移ろいを感じさせる静かな魅力の一首ですよね。
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万葉集巻八
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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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