万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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大行天皇(さきのすめらみこと)の吉野の宮に幸しし時の歌

み吉野の山の嵐(あらし)の寒(さむ)けくにはたや今夜(こよひ)もわが独り寝(ね)む

巻一(七四)
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み吉野の山の嵐はこんなにも寒いのに、今夜もわたしは一人で孤独に寝るのだろうか。
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この歌は大行天皇(文武天皇)が吉野宮に行幸された時に詠まれた御製歌と云われています。
まあ、実際には天皇の御製歌ではなく宮廷歌人などの代作かとも思われますが、この時代の歌は文学作品としてではなく呪術歌として口ずさむ祈りの歌でしたので、思いを込めて詠うことが出来れば本人の作でなくとも問題はなかったのです。
この歌も一読すると寒き夜の独り寝の寂しさを詠っただけの単純な一首ですが、実際には旅先の不安な夜に藤原京に残してきた妻(夫人)を想って心の動揺を鎮めようとした鎮魂歌なのでしょう。

この時代、旅先で独り寝する者は夜の闇に心が吸い込まれて散ってしまわぬようにと、家に残してきた妻を想って一心に歌を詠みました。
そうすることで心を集中して闇に取り込まれないようにと祈ったわけですね。
おなじように、家に残った妻も旅先の夫を想い、道の神々や精霊の加護を求める歌を詠んで夫の無事を祈りました。
いわば歌を詠む行為は家を守るための夫と妻の共同作業だったわけですね。
まあ、天皇の場合は何人もの妻が居て家というものの重さも大きさも桁が違いますが、その根本の部分の祈りは同じものだったはずです。

吉野の宮での嵐吹く夜の不安な独り寝を、文武天皇もきっと夫人のことを想いながらこの歌をなんども口ずさみ祈ったことでしょう。


文武天皇が行幸した宮滝の吉野宮跡。
吉野町立中荘小学校(現在はすでに閉校し野外学校として利用されています。)の側にあります。



奈良県明日香村にある文武天皇陵(文武天皇のお墓)。


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万葉集巻一の他の歌はこちらから。
万葉集巻一


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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