万葉集入門
万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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酒の名を聖(ひじり)と負(おほ)せし古(いにしへ)の大(おほ)き聖の言(こと)のよろしさ

巻三(三三九)
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酒のことを聖と呼んだ昔の大聖人の言葉のよさよ。
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この歌も先の巻三(三三八)の歌からつづく大伴旅人(おほとものたびと)の酒を誉める歌として詠んだ十三首のうちの一首。
これは中国三国志の時代、魏(き)の国の曹操(そうそう)が禁酒令を出したとき、徐獏※1(じょばく)が禁酒令を破り清酒を「聖」、濁り酒を「賢者」と呼んで飲んだ中国の故事をもとにしたものです。
徐獏らは聖人ではありませんが、旅人はあえて酔人を聖人と評して詠みました。
「酒を聖(ひじり)と呼んだ大陸の昔の人の言葉のすばらしさよ」
昔の偉い人もこのように酒を愛していたのだとの自分自身の境遇に重ね合わせて故事を読む気持ちは、旅人の時代から千年以上も経った現在のわれわれとも共通する感情ですよね。
旅人が古く魏の時代の徐獏を思い酒を飲んだように、現代人も旅人の時代を思って酒を飲んでいるのは繰り返す歴史の面白さだと思います。

旅人が長官として赴任した九州にある筑紫(つくし)の大宰府(だざいふ)は、大陸との外交の窓口でもあり大陸の文化などに直接触れることのできる場所でもありました。
(大宰府は現在の福岡県太宰府市大字観音寺字大裏に政庁跡などが発掘されています。)
そんな地での生活は旅人をはじめ中央から赴任してきた者たちに文化面で大きな刺激と影響を与えたようです。
旅人のこの歌も、大陸の故事を取り入れるなど、中央(奈良の京)のそれとはまた一風違った、後の世に「筑紫(つくし)歌壇」と呼ばれる歌風の片鱗が見て取れますね。

※1:「獏」は正しくは「之」+「貌」


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万葉集巻三


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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