万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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皇女の哀(かな)しび傷(いた)みて作りませる御歌二首
うつそみの人にあるわれや明日よりは二上山(ふたかみやま)を弟(いろせ)とわが見む
巻二(一六五)
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現実の世の人であるわたしは明日からは弟の眠る二上山を弟だと思って偲び見て過ごします。
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国家の反逆者として処刑された大津皇子の遺体は一端仮の埋葬(この当時は墓が出来るまで仮に埋葬されその後本葬されました)をされた後、大和盆地の西の端にある二上山に埋葬されます。
この歌は大伯皇女が、藤原京から弟の大津皇子が眠る二上山を眺めて詠んだ歌です。
二上山は現在では「にじょうざん」と呼ばれ、江戸時代にはすでに唐読みでこのように呼ばれるようになっていたようですが、万葉集の時代には「ふたかみやま」と呼ばれていました。
大伯皇女のこの歌の歌碑
奈良県桜井市吉備にある春日神社前の池のほとりに立っています。
大津皇子の墓は宮内庁によって二上山の雄岳の山頂近くに作られていますが、実際に埋められた場所が何処なのかは諸説別れています。
ただ、近年二上山の大和側の麓に発見された「鳥谷口古墳」がその埋葬地として有力視されているようですね。
大伯皇女の歌をそのまま解釈すれば二上山に埋められたことになりますが、たしかにこの「鳥谷口古墳」の場所なら藤原京にいる大伯皇女が二上山を眺めて麓に埋められている弟を偲んだとする解釈も自然なように思います。
「うつそみの」は今現在という意味です。
まあ、この歌の内容については解説などとくに必要ないでしょう。
弟を想う大伯皇女の切り裂かれんばかりの哀しみが、今の世の人々の心にも素直に伝わってくる一首ではないでしょうか。
出来るなら、みなさんも実際に大和盆地を訪れて、二上山を眺めながらこの歌を何度も口ずさんでみてほしいと思います。
夕方の西の空に夕日を背景に浮かび上がる二上山は、いまも大津皇子の無念と、大伯皇女の哀しみを現在に伝えてくれることでしょう。
(もう一つの歌については次回解説させていただきます。)
大和盆地の西に連なる葛城山脈の端に位置する二上山。
二つ並んだ峰の左側が雌岳、右側が雄岳。
二上山雄岳山頂付近にある大津の皇子の墓。
二上山の大和側麓にある鳥谷口古墳。
鳥谷口古墳。
ここがほんとうの大津皇子のお墓という説も。
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万葉集巻二
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万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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