万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。

(解説:黒路よしひろ)

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やすみしし わご大君 高照らす 日の御子 神ながら

軽皇子(かるのみこ)の阿騎の野に宿りましし時に、柿本朝臣人麿の作れる歌

やすみしし わご大君 高照らす 日の御子(みこ) 神ながら 神さびせすと 太敷(ふとし)かす 京(みやこ)を置きて 隠口(こもりく)の 泊瀬(はつせ)の山は 真木(まき)立つ 荒山道(あらやまみち)を 石(いわ)が根 禁樹(さへき)おしなべ 坂鳥の 朝越えまして 玉かぎる 夕さりくれば み雪降る 阿騎(あき)の大野に 旗薄(はたすすき) 小竹(しの)をおしなべ 草枕 旅宿(たびやど)りせす 古(いにしへ)思ひて
巻一(四十五)

阿騎(あき)の野に宿る旅人打ち靡(なびき)き眠(い)も寝(ぬ)らめやも古思(いにしへおも)ふに

ま草(くさ)刈る荒野にはあれど黄葉(もみちば)の過ぎにし君が形見(かたみ)とそ来(こ)し

東(ひむがし)の野に炎(かぎろひ)の立つ見えてかへり見すれば月傾(かたぶ)きぬ

日並皇子(ひなみしのみこ)の命(みこと)の馬並(な)めて御猟(みかり)立たせし時は来向かふ

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くまねく国土をお治めになるわが大君、その皇子である高く輝く日の御子、皇子は神そのものとして神々しく、立派に君臨されている京(みやこ)を後にして、隠(こも)り国の泊瀬(はつせ)の山の真木(まき)が茂り立つ荒々しい山道を、岩や木々を押し分けて坂鳥の鳴く朝にお越えになり、玉の輝くような夕暮れになると、雪の降る阿騎の大野に旗薄や小竹を押しのけて、草を枕の旅宿りをされている。
懐かしき父の想い出を胸に。
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軽皇子(かるのみこ)は草壁皇子(くさかべのみこ)の子。
この長歌は、柿本朝臣人麿が軽皇子の附き従い、阿騎(あき)の野を訪れたときに詠んだものです。
一読すると、ただ軽皇子との旅の情景を皇子を讃えて詠っているだけのようですが、実際にはそれほど単純な歌ではありません。

というのも、この阿騎の野はかつて軽皇子の父親でありいまはもう亡くなってしまった草壁皇子が狩りに訪れた想い出の場所でもあるのです。
草壁皇子については以前説明しましたが、持統天皇の子で病弱なため天皇になる前に若くして亡くなってしまいました。

つまり、かつて父である草壁皇子が訪れた想い出の場所である阿騎の野に、いまその再来のように軽皇子が馬を走らせているわけです。


阿騎の野にある柿本人麻呂公園。


公園内にある柿本人麻呂(人麿)の象。


阿騎の「かぎろひの丘」にあるこの長歌の歌碑。
かぎろひの丘は柿本人麻呂公園から北に少し行った場所にあります。


近くには有名な又兵衛桜もあります。

まあ、この長歌自体はあまり有名ではなく、万葉集の解説でもほとんど取り上げられることもありませんが、この歌に付けられた四首の反歌は非常に有名なのでその理解のために、この長歌も少し詳しく解説しておきますね^^
長歌を無視してそれに付けられた反歌のみを語るというのは、しっくりきませんしね(笑)

(反歌についてもまた後ほど)


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万葉集巻一の他の歌はこちらから。
万葉集巻一


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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