万葉集入門
万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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藤原宮の役民(えきのたみ)の作れる歌

やすみしし わご大王(おほきみ) 高照らす 日の皇子 荒栲(たへ)の 藤原がうへに 食(を)す国を 見(め)し給はむと 都宮(みあらか)は 高知らさむと 神ながら 思ほすなへに 天地(あめつち)も 寄りてあれこそ 石走(いはばし)る 淡海(あふみ)の国の 衣手(ころもで)の 田上山(たなかみやま)の 真木(まき)さく 檜(ひ)の嬬手(つまで)を もののふの 八十氏河(やそうぢがわ)に 玉藻なす 浮かべ流せれ 其(そ)を取ると さわく御民(みたみ)も 家忘れ 身もたな知らず 鴨じもの 水に浮きゐて わが作る 日の御門(みかど)に 知らぬ国 寄(よ)し巨勢道(こせぢ)より わが国は 常世(とこよ)にならむ 図(ふみ)負へる 神(くす)しき亀も 新代(あらたよ)と 泉の河に 持ち越せる 真木の嬬手を 百足(ももた)らず 筏に作り 泝(のぼ)すらむ 勤(いそ)はく見れば 神ながらならし

巻一(五〇)
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すべての国土をお治めになるわが大君、高く輝く日の御子は、荒布の藤原の野の上にこの国を統治なさろうと、宮殿も高々と作り支配なさろうと、さながらの神としてお思いになった。
天地も合い寄りてお仕えし、岩ほとばしる水の国近江の、衣の袖の田上山の、真木を割いた檜の荒材を、もののふの八十の宇治川に玉藻のように浮かべ流していることだ。
それを取ろうと騒ぎ働く御民も、家のことは忘れ、わが身もまったく顧みず、鴨のように水に浮かびて、日の御子の朝廷を造営する。
その朝廷に知らぬ国も寄りついて来るという巨勢道から、わが国が永遠に栄えるだろうと予見させる図をもった神々しい亀も、新しい御代の初めとして出でて来たる。
泉川に運び込んだ真木の荒材を、百足らぬ筏に組んでは川をのぼらせているようだ。
役民たちが一生懸命に働いているのを見ると、これも天皇の神のお力なのだろう。
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この歌は藤原宮造営の時に役民が作ったとされる長歌です。
まあ、役民にこのような長歌が詠めるとはとても思えないので、おそらくは宮廷歌人のうちの誰かが役民の立場に立って朝廷を讃える目的で詠んだのでしょう。

はじめに天皇(持統天皇)の偉業を褒め称え、次いで、天皇のその力で近江の国の田上山の檜を割いた荒材を宇治川を通り、木津川(泉川)を遡って運ぶ役民の生き生きと働く姿が詠われています。
巨勢道から現れた神々しい亀など、これらもすべて天皇の神さながらのお力のおかげなのだろうと…

いわば藤原宮完成の予祝であり、素晴らしい京になるようにとの祈りも込められている歌と言えるでしょう。



藤原宮のあった藤原京跡。
いまは史跡公園として整備されていてだれでも自由に訪れることが出来ます。
(藤原宮跡の側などに駐車場もあります。)



藤原京は北は耳成山、南方面には飛鳥宮や畝傍山の側まで広がっていた広大な京であったようです。



藤原宮の南にある藤原京朱雀門跡。



藤原京朱雀門跡側から見た藤原京。
遠く耳成山も望めます。



奈良県橿原市の奈良文化財研究所藤原宮跡資料室。



奈良文化財研究所藤原宮跡資料室にある「藤原宮の役民(えきのたみ)の作れる歌」資料。


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万葉集巻一の他の歌はこちらから。
万葉集巻一


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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