万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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天皇の、吉野の宮に幸(いでま)しし時の御製歌(おほみうた)

よき人のよしとよく見てよしと言ひし吉野よく見よよき人よく見つ


巻一(二十七)
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昔のりっぱな人が、よき所としてよく見て「よし(の)」と名付けたこの吉野。りっぱな人である君たちもこの吉野をよく見るがいい。昔のりっぱな人もよく見たことだよ。
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この歌は天武天皇の作だといわれています。
歌が詠まれた場所は現在の奈良県吉野町宮滝のあたりにあった吉野宮でしょうか。
このとき天武天皇は自分の子や縁者である6人の皇子たちを集め、みなが結束する事を盟約させたといわれています。

当時の吉野は霊力の満ちた特殊な場所と考えられており、後に持統天皇なども何度も吉野への行幸を行いその霊力の恩恵に授かろうとしました。

昔の偉大な人がよく見てその霊力を認め、「よし(の)」と名付けた吉野の風景を見ながら、吉野の偉大な霊力を感じさせその前で盟約させることで皇子たちの結束をはかろうとしたのでしょう。

いまの感覚で言うのなら、神の前で誓いを立てるといった感じでしょうか。

かつて、壬申(じんしん)の乱で兄の天智天皇の子である弘文天皇(大友皇子)の近江朝廷を武力で滅ぼした天武天皇。
自分の子供たちには、肉親縁者で争うようなことがないようにと盟約させたわけですが…

天武天皇が亡くなった後、皇位継承を巡る様々な思惑の中でこの盟約の場にもいた大津皇子(おほつのみこ)が謀反の罪を着せられ処刑されるなど、結局肉親の間での争いと血なまぐさい悲劇が起こってしまうのでした。

まあ、それについては後々、他の歌を通して語ってゆきたいと思います。


近鉄吉野駅の前にあるこの歌の歌碑。



こちらは、吉野郡下市の中央公園にある歌碑。



吉野町宮滝の吉野資料館横の休憩所にもこの歌の歌碑があります。



宮滝の吉野宮はいまの中荘小学校の辺りにあったといわれています。
吉野上市から吉野川をさかのぼり数キロ東へいった場所に宮滝はあります。
近くには吉野歴史資料館もあるので機会があったらぜひ一度訪れてみて下さい。


中荘小学校のすぐ横を流れる吉野川。
吉野よく見よよき人よく見つ


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万葉集巻一の他の歌はこちらから。
万葉集巻一


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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