万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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大宰師大伴卿(だざいのそちおおとものまへつきよみ)の凶問に報(こた)へる歌一首

世の中は空(むな)しきものと知る時しいよよますますかなしかりけり

巻五(七九三)
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世の中がじつは空しいものだと思い知ったとき、いよいよますます悲しみが深まることだなあ。
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この歌は万葉集巻五の冒頭に置かれた一首で、大伴旅人(おほとものたびと)の作。
大伴旅人は万葉集の編者といわれる大伴家持の父で代々の武門の名家出身者として九州で隼人の反乱を鎮圧するなどの活躍をした傍ら、赴任先の大宰府で山上憶良(やまのうへのおくら)らと親交を持ち、奈良の都のそれとは一風違った後世に筑紫(つくし)歌壇と呼ばれる多彩な歌を残しています。

大宰府は九州の筑前の国に設置されていた地方行政機関のことで、外交や防衛などを主な任務としその権限の大きさから「遠(とお)の朝廷(みかど)」とも呼ばれていました。
「大宰師(だざいのそち)」はその最高責任者である長官。
大宰府のある筑紫は大陸との外交の窓口でもあり、新しい文化にもっとも早く触れる機会のあった土地でもあったことから大伴旅人や山上憶良たちのような独自の歌風が生まれたものと思われます。

詞書きに凶問に報(こた)へる歌とありますが、これは天武天皇の皇女、田形皇女の訃報でしょうか。
「報へる」とあるのは、訃報を知らせてくれた使者に対してこの歌を詠んだという意味でしょう。

旅人は太宰師として筑紫に着任した翌年、その地で妻の大伴郎女を亡くしました。
都から遠く離れた地で最愛の妻を亡くした喪失感は、旅人の心を想像以上に深く悲しませたようです。
そして今また、都から届けられた天武天皇の皇女、田形皇女の訃報。
「世の中は空しいものだと知識では知っていたけれど、こんなに不幸が続いて重なってくるとますます実感として思い知らされることだなあ。」との何のひねりもない歌の表現は、それゆえに旅人の実感がこもったもののように思われます。
妻を亡くした悲しみに沈んでいるときに、さらに都から届いた訃報は、旅人のこころをさらに重いものにしたのでしょう。


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万葉集巻五


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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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