万葉集入門
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現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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妹が名に懸(か)けたる桜花咲かば常にや恋ひむいや毎年(としのは)に 〔その二〕

巻十六(三七八七)
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彼女の名にゆかりの桜花が咲いたならますます恋しいだろうか、毎年、年を重ねるごとに
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この歌も先の巻十六(三七八六)の歌と同じく、自らの恋の争いのために大切な女性を失ってしまった男が詠んだとされる一首。
こちらの歌の作者は先の巻十六(三七八六)の歌を詠んだ男と、桜児をめぐって争ったもう一人の男のほうですね。
(まあ、伝説などをもとにした歌物語なので、この歌自体の作者は別の人物なのかも知れませんが。)

自分を妻にしようと男たちが争うのを止めるために、自ら命を絶った娘子の桜児…
そんな「彼女の名にゆかりの桜花が咲いたならますます恋しいだろうか、毎年、年を重ねるごとに」と、桜児の居ない春を思って嘆いた一首となっています。
いつの世も恋に争いはつきものですが、その結果としてこの歌物語の三人のように、誰もが悲しむ結末を迎えた恋もあったのでしょうね。
この二人の男は、毎年、春が来るたびに、桜の花を見るたびに、亡くなった桜児のことを思って悲しみの涙を流したのでしょう。


先の巻十六(三七八六)の歌の歌碑(奈良県橿原市大久保町の大久保公民館前)の前には、桜児のお墓と伝わる娘子塚(おとめづか)があります。



桜児の墓と云われる娘子塚。



塚の裏に回ると中に入れる入り口があります。



桜児を奉った祠。



「桜児伝説と娘子塚」の解説板によると、かつてこの娘子塚を挟んで西にはコガネ塚(黄金塚)、東にはスクネ塚(宿禰塚)という塚があり、それぞれ桜児をめぐって争った二人の壮士のお墓であるとも云われています。



二人の壮士のお墓とも云われるコガネ塚とスクネ塚は、現在では掘削されてしまったのかもうどこにあるのか確認することは出来ませんでした。



「桜児伝説と娘子塚」の解説板にもこの歌が紹介されています。



娘子塚のすぐ後ろには歴代天皇遥拝所があり、西には畝傍山(うねびやま)が望めます。
この桜児伝説は畝傍山周辺の悲恋の歌物語として語り継がれてきた伝説だったようですね。



娘が名に懸けたる桜花…


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万葉集巻十六


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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