万葉集入門
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現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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白髪(しろかみ)し子らも生(お)ひなばかくの如(ごと)若けむ子らに罵(の)らえかねめや

巻十六(三七九三)
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白髪があなたたちにも生えてしまったならこの私のように若い娘たちから悪口を言われかねないでしょう
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この歌も先の巻十六(三七九二)の歌と同じく、万葉集巻十六(三七九一)の長歌につけられた反歌二首の内の一つ。
こちらもまた、竹取の翁(おきな)が作者であるという形を取っています。

九人の仙女に出逢った竹取の翁がやがて仙女たちから邪魔者扱いを受け始め、馴れ馴れしくした償いにと詠んだ長歌の反歌二首目ですが、やはり長歌の内容を繰り返す形で「白髪があなたたちにも生えてしまったならこの私のように若い娘たちから悪口を言われかねないでしょう」と、老人を軽んじることの愚かさを説いています。

現代でもそうですが、万葉集の時代からすでに老人を軽んじるような風潮はやはりあったのでしょうね。
長歌の終わりに孝子伝の逸話を用いるなど、「あなたたちだっていずれは年を取るのですよ」との教えには大陸からの影響も強く感じられますが、あるいはこの時代に入って来た新しい道徳観を広める目的もあってこれらの歌が詠まれたのかも知れませんね。


竹取の翁が住んでいたとされる奈良県広陵町にある竹取公園には、竹取物語のパネルの展示などもあります。
万葉集巻十六(三七九一)の長歌をはじめとする万葉集のこの歌物語とは直接関係はありませんが、おなじ竹取の翁の物語として「竹取物語」もここで紹介しておきたいと思います。



『今は昔、竹取の翁といふものありけり』から始まる冒頭で有名な平安時代の竹取物語。



『ある日、竹取の翁が竹を取りに行くと、きらきらと光る竹を見つけ、近づいてみると竹の中に三寸(10センチ)ほどの女の子がいました。
翁はその子に「かぐや姫」と名付け、大切に育てました。
それからというもの、翁が竹を切るたびに竹の中から黄金が現れ、翁はたいへんなお金持ちになりました。』



『三か月ほどするとかぐや姫は成人した美しい姿になっていました。
かぐや姫の美しさは国中の評判となり、多くのものが求婚に現れましたが、かぐや姫は誰とも会おうとはしませんでした。
そんな中で、都から来た五人の貴公子だけはあきらめずにかぐや姫のもとに通いつづけました。
かぐや姫は「つぎの品を先に持ってきてくださった方と結婚します」と言い、石作皇子には天竺にある仏の石の鉢を。
車持皇子には蓬莱山の玉の枝を。
阿倍御主人には唐土にいる火鼠の皮衣を。
大伴御行には龍の首にある五色の珠を。
石上麻呂足には燕の持っている子安貝を。
と、注文しました。
五人の皇子はそれぞれに大金を使ったり、偽物を作ったりしたのですが、偽物がばれたり失敗したりしてみな恥をかいてしまいました。』



『それから三年ほどの月日が過ぎ、七月十五夜の月が出る頃になると、かぐや姫は物思いにふけり涙さえ浮かべるようになりました。
その様子を心配して翁が訪ねると、かぐや姫は「私はこの世のものではありません。月の都からやって来たものです。八月十五夜になると月から迎えがやって来て、やさしいお爺さんやお婆さんと別れなければならなくなるのが辛いのです。」と泣きながら打ち明けました。』



『満月の夜がやって来ました。
たくさんの帝の家来たちが弓矢をもってかぐや姫を護ろうとしましたが、真夜中近く、月はますます大きくなって昼の輝き以上に眩しくなり、月の都の使者が空から降りてきました。
帝の家来たちは弓矢を構えましたが、突然、ピカッとまばゆい光がきらめき人々は身動きが出来なくなってしまいました。
かぐや姫を乗せた車は天女たちに護られて、十五夜の美しい月の中に消えていきました。
お終い。』

とまあ、これが誰もが知る竹取物語の内容ですが、この万葉集の歌物語で竹取の翁が出逢ったのもきっとかぐや姫に負けないぐらいの仙女たちだったのでしょうね。
この歌物語の竹取の翁自身も優れた長歌を詠むなどどこか神仙性を持った人物として描かれていますが、この時代の人々が仙女や仙人たちの棲む世界に持っていた憧れもまた感じられて面白い歌のようにも思います。


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万葉集巻十六の他の歌はこちらから。
万葉集巻十六


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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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