万葉集入門
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現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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あしひきの山縵(やまかづら)の児(こ)今日往くとわれに告(つ)げせば還(かへ)り来(こ)ましを 二

巻十六(三七八九)
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あしひきの山縵児が今日行くと私に言ってくれたなら、帰って来たものを
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この歌も先の巻十六(三七八八)の歌と同じく、耳無の池に身投げした少女、縵児を思って三人の男が詠んだ歌の一つです。
歌の後に番号が振ってあるのは、これらの歌もまた後の世の人に歌誦された形跡なのでしょう。

「あしひきの」は「山」に懸る枕詞。
「山縵(やまかずら)」は、植物のヒカゲノカズラのことですが、縵児(かづらこ)の名前から連想して縵児のことをこう表現したのでしょう。
あるいは縵児は実際に髪に山縵を飾っていたのかも知れませんね。
(この時代、植物を髪に飾って植物の生命力を授かろうとした風習がありました)。

三人の男に同時に求婚されて思い悩み、遂には耳無の池に身投げして亡くなってしまった縵児。
そんな縵児に「あしひきの山縵児が今日池に行くと私に言ってくれたなら、帰って来たものを」と、もし一言でも入水することを自分にほのめかしてでもくれたなら止めに帰って来たのにと悔やんでいます。
この男は縵児に逢いに行って自宅に戻った後に、縵児が入水したことを知ったのでしょうか。

もし一言でもほのめかしてくれたなら、どんなことをしてでも止めに縵児の元に帰ったのにと心の底から悔やんでいる訳ですね。
そんなやり場のない悲しみがこの歌からもよく伝わってくるように思います。


山縵(ヒカゲノカズラ)。
春日大社神苑にて。



ヒカゲノカズラはつる性多年生のシダ植物です。
縵児もその生命力にあやかろうと、ヒカゲノカズラを実際に髪に飾っていたのかも知れませんね。
まあ、結果的には自身でその命を絶ってしまうわけですが…


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万葉集巻十六の他の歌はこちらから。
万葉集巻十六


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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