万葉集入門
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現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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荷葉(はちすば)を詠める歌

蓮葉(はちすば)はかくこそあるもの意吉麿(おきまろ)が家なるものは芋(うも)の葉にあるらし

巻十六(三八二六)
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蓮の葉とはこのようなものを言うのですね。意吉麿の家にあるのは芋の葉であったようです
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この歌もまた巻十六(三八二四)の歌などと同じく、長忌寸意吉麿(ながのいみきおきまろ)が詠んだ歌のひとつです。
題詞に「荷葉(はちすば)を詠める歌」とあるように、蓮の葉をお題にして詠んだ一首となっています。
「蓮(はちす)」は植物のハスのこと。
「芋(うも)」はおなじく植物のイモですが、この場合は蓮の葉に似ているとのことですのでサトイモのようですね。

歌の内容は「蓮の葉とはこのようなものを言うのですね。意吉麿の家にあるのは芋の葉であったようです」と、実際に蓮の葉を見ていままで蓮だと思っていた自分の家の蓮の葉は、じつは芋の葉であったと気付かされたとの歌になっています。

おそらくは宴会などの席で、蓮の葉に食物を乗せてふるまわれたのでしょうね。
そして宴席には綺麗な接待役の遊女(この時代の遊女は歌などを嗜む教養のある女性たちでした)もいたのでしょう。
さすがに意吉麿も蓮と芋の葉の区別ぐらいはついていたはずなので、これはそんな宴席を用意してくれた主人格への謝礼の意味を込めて、また遊女たちを褒め称える意味で詠まれた挨拶歌でもあったのではないでしょうか。

「芋(うも)」には恋人や妻の意味でもある「妹(いも)」の意味も掛けられていて、そんなわが家の妹(芋)に比べてここに居る遊女たちは蓮のようだと誉めている訳ですね。
ただ、それと同時に、やっぱり自分には芋の葉のような妹が一番なじみ深いのだとの、背景に妻への愛情が感じられる歌のようにも思います。


蓮の花(春日大社神苑の大賀ハス)。



蓮葉はかくこそあるもの…



原始ハス(大賀ハス)解説。



芋(サトイモ)の葉。
たしかに蓮の葉に似ていますね。



この歌の紹介されたプレート(春日大社神苑)。


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万葉集巻十六の他の歌はこちらから。
万葉集巻十六


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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