万葉集入門
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現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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香(こり)、塔(たふ)、厠(かはや)、屎(くそ)、鮒(ふな)、奴(やつこ)を詠(よ)める歌

香塗(こりぬ)れる塔(たふ)にな寄りそ川隈(かはくま)の屎鮒喫(くそふなは)める痛(いた)き女奴(めやつこ)

巻十六(三八二八)
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香を塗った塔には近寄るな。川隅の屎鮒を食ったひどい女奴よ
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この歌も巻十六(三八二四)の歌などと同じく、長忌寸意吉麿(ながのいみきおきまろ)が詠んだ歌のひとつ。
題詞には「香(こり)、塔(たふ)、厠(かはや)、屎(くそ)、鮒(ふな)、奴(やつこ)を詠(よ)める歌」とありますが、おそらくは宴席などで出席者たちからそれぞれに出されたお題をすべて一首に詠み込んで詠った題詠なのでしょう。
それにしても「香」、「塔」、「厠」、「屎」、「鮒」、「奴」とは、無茶なお題ですよね(笑)

宴席などでこの手のお題を詠むのは長忌寸意吉麿の得意だったのでしょう。
今回もすべての題を「香を塗った塔には近寄るな。川隅の屎鮒を食ったひどい女奴よ」と、見事に一首の歌として詠み込んでいます。

「香(こり)」とは「香(こう)」のこと。
「塔(たふ)」は寺の三重、五重塔などでしょうか。
「厠(かはや)」はトイレ。
「屎(くそ)」、鮒(ふな)」は説明の必要もありませんね。
「奴(やっこ)」は当時の身分の低い者のこと。

歌にある「川隅(かはすみ)」は厠のある場所のことで、川の隅を利用して厠を作り川に糞尿を流していたのでしょう。
「屎鮒(くそふな)」はそんな川隅の糞尿を食べた鮒のことで、「な〜〜そ」は禁止を意味します。
つまりは「川隅の屎鮒を食ったひどい女奴」に香を塗った美しい塔には近寄るなよ、と言っている訳ですね。

まあ、歌としての格調さはまったくないですが、無茶なお題を見事に詠み込んで笑いを取った、場を和ませる宴席歌としては見事に成功したのではないでしょうか。


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万葉集巻十六


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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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