万葉集入門
現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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世間(よのなか)の無常を厭(いと)へる歌二首
生死(いきしに)の二つの海を厭(いと)はしみ潮干(しほひ)の山をしのひつるかも
巻十六(三八四九)
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生と死の二つの海がいとわしいので潮のない山が慕わしいことだよ
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この歌は、題詞に「世間の無常を厭へる歌二首」とあるように、世の中の無常を嘆いて詠まれた二首の歌のうちのひとつ。
もう一つの歌である次の巻十六(三八五〇)の歌の後につけられた左注によると、この二首の歌は川原寺の仏堂の中の倭琴(やまとこと)の表面に記されていたとのことです。
川原寺は奈良県明日香村にあった官寺。
おそらくは川原寺には技楽団があったのでしょう。
歌の内容もそんなお寺にふさわしく「生と死の二つの海がいとわしいので潮のない山が慕わしいことだよ」と、宗教色の強い内容となっています。
仏教には一切のものは生滅、変化して常住ではないとの教えがありますが、そんな生や死を二つの苦海に譬え、生死から解脱した山(須弥山)への憧れを詠っている訳ですね。
この時代には、生きて行くことも苦しく、病などで亡くなる者も多かったことから、人生の苦しさや死に対する悲しみから逃れて極楽浄土に行きたいとの願いがこのような歌を詠ませたのでしょう。
大陸から入って来た仏教の教えが徐々に受け入られれて来た歴史も感じられて、興味深い歌でもありますね。
奈良県明日香村の川原寺(かわらでら)跡。
現在は弘福寺が法燈を継承しています。
(川原寺跡は橘寺と道を挟んで向かい合った場所にあります。)
川原寺は飛鳥の官寺で、天智天皇が実母の斉明天皇の菩提を弔うために造営した大王家(天皇家)の寺院でした。
川原寺の搏仏(明日香村埋蔵文化財展示室)。
川原寺裏山遺跡から出土の塑像。
粘土で作られた仏像です(明日香村埋蔵文化財展示室)。
こちらも川原寺裏山遺跡からの出土品(明日香村埋蔵文化財展示室)。
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万葉集巻十六
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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