万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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石上大臣(いしのかみのおほまへつきみ)の従駕(おほみとも)にして作れる歌

吾妹子(わぎもこ)をいざ見の山を高みかも大和(やまと)の見えぬ国遠(とほ)みかも

右は、日本紀に曰はく「朱鳥(あかみとり)六年壬辰(じんしん)の春三月丙寅(へいいん)の朔(ちきたち)の戊辰(ぼしん)、浄広肆広瀬王等(じやうくわうしひろせのおほきみたち)を以ちて留守の官となす。ここに中納言三輪朝臣高市麿(みわのあそみたけちまろ)その冠位を脱きて朝(みかど)にフ上(ささ)げ、重ねて諌(いさ)めて曰く『農作(なりはひ)の前に車駕いまだ以ちて動くべからず』といふ。辛未(しんび)、天皇諌(いさめ)に従はず、遂に伊勢に幸す。五月乙丑(いつちう)の朔の庚午(かうご)、阿胡の行幸に御(いでま)す」といへり

巻一(四四)
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わが妻をいざ見ようといういざ見の山は名ばかりで大和はちっとも見えないなあ。それだけ国の遠くへ来たということか。
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この歌は、持統天皇の伊勢行幸に従駕した石上大臣(いしのかみのおほまへつきみ)の詠んだ一首です。
石上大臣は石川麿のことで、臣下の最高位である左大臣の地位に就いた人物です。
(ただしこの歌の時点ではまだ左大臣の職にはなかったようですが…)

先の當麻真人麿(たぎまのまひとまろ)の妻が詠んだ巻一(四三)の歌が家に残った妻が旅先の夫を案じて詠んだ祈りの歌だったのに対して、こちらでは旅先にいる夫が家に残してきた妻を思って詠んだ一首となっており、対比の形としてこの時代の祈りの歌がどのようなものであったのかがよく分かる内容になっているかと思います。
「わが妻をいざ見ようといういざ見の山は名ばかりで大和はちっとも見えないなあ。それだけ国の遠くへ来たということか。」と、実際には伊勢の側から妻の姿など見えるわけはないのですが家に残してきた妻を心に思って詠うことで、遠い地へ来てしまった旅先の心の不安を鎮めようとしたわけですね。

「いざ見の山」は奈良県と三重県をまたぐ高見山(たかみやま)のことで、この時の行幸は伊賀を通り伊勢に出てから奈良(大和)方面の高見山を見たことになります。

ちなみに、左注によるとこの持統天皇の伊勢行幸には、田に稲を植える準備に入る前に行幸の車駕を道に入れては農民を疲弊させてしまうとして、中納言三輪朝臣高市麿(みわのあそみたけちまろ)がその冠位を返上してまで諌めたにもかかわらず聞き入れられなかったとのことです。
この年は藤原宮への遷都のための地鎮祭が行われた年でもありますが、臣下のもっともな反対を押し切ってまでも持統天皇には伊勢の神の加護を得るために行幸を強行しなければならない理由があったのかも知れませんね。
まあ、歌とは直接関係のない話ですが…


奈良県と三重県にまたがる高見山(いざ見の山)。



高見山は標高が高く登ろうと思うと本格的な登山になりますが、高見峠を通ると写真のような登山道の中腹地点まで車で行けます。
ここから山頂まで50分ほど。


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万葉集巻一


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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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