万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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當麻真人麿(たぎまのまひとまろ)の妻の作れる歌

わが背子は何処(いづく)行くらむ奥(おき)つもの隠(なばり)の山を今日か越ゆらむ

巻一(四三)
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私の夫はどのあたりを旅しているかな。きっと遠い彼方の隠の山を今ごろは越えているころでしょう
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この一首は、當麻真人麿(たぎまのまひとまろ)の妻が旅に出た夫を案じて詠んだ一首です。
隠(なばり)は今の三重県名張市。
隠の山はその名張から見える山で、どこと限定する必要はないでしょう。

万葉の時代、隠(なばり)は飛鳥から東国へ向かう道の交通の要所であり、また東国の動きを監視する上でも非常に重要な土地だったといわれています。

この時代の旅は今でいう物見見物の旅行ではなく、天皇の行幸に従駕したり朝廷からの使者として各地へ向かう人々がほとんどで、當麻真人麿もそのような任務での旅だったのでしょう。
(おそらくはこの歌の前後の巻一:四〇巻一:四四の歌などとおなじく持統天皇の行幸時のものかと思われます。)
そんな旅行く夫を持った女性は家において、夫を案じて一心にこころを傾け夫の無事を祈る祈りの歌を詠むのが習わしでした。
夫の旅行く土地の道の神々に、どうか夫が無事に通れますように見守ってほしいと祈りを捧げたのです。

ですから、この歌も単純に今ごろどこにいるのかなあ、と想像しているわけではなく、隠の山の神々に、どうか夫を無事に通してほしいとの祈りが込められている言霊の歌なわけですね。

万葉の時代は今の時代よりもはるかに神々や精霊と人間との距離が近かったのですね。


三重県名張(なばり)市にある山。
当時の名張(隠)は飛鳥から東国へ向かう道の交通の要所であり、また東国の動きを監視する上で非常に重要な土地でした。


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万葉集巻一


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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