万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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舎人娘子(とねりのをとめ)の従駕(おほみとも)にして作れる歌
丈夫(ますらを)の得物矢手挿(さつやたばさ)み立ち向かひ射(い)る円方(まとかた)は見るに清潔(さや)けし
巻一(六一)
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立派な男子が矢を手に挿み立ち向かって射る的のように、円方は見るに清々しい
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この歌は天皇の行幸に従駕した舎人娘子(とねりのをとめ)の詠んだ一首。
おそらくは巻一(五九)の歌などと同じく持統天皇の伊勢行幸時のものでしょう。
「円方(まとかた)」は現代では地名として残っていませんが、三重県松阪市東黒部町の中野川周辺であるとされています。
この歌も、そんな円方の地を誉めた典型的な土地讃めの一首ですね。
「丈夫の得物矢手挿み立ち向かひ射る(立派な男子が矢を手に挿み立ち向かって射る的)」までが「円方」を修飾していて内容自体は「円方は見るに清々しい」と言っているだけですが、上の句の修飾部分そのものも見事に土地讃めの言葉として機能しています。
この時代の、道や土地にはその地に根付いた道の神々がいると信じられていた場所がいくつもありました。
そしてその場所を通過するときには、神々の祟りや呪いを畏れて幣などを手向け、またこの歌のように土地讃めの歌を詠んでそのご加護を得て旅の無事を祈ったのです。
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万葉集巻一
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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