万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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玉藻刈る沖辺(おきへ)は漕(こ)がじ敷栲(しきたへ)の枕の辺(あたり)忘れかねつも

右の一首は式部卿藤原宇合(ふじはらのうまかひ)

巻一(七二)
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玉藻を刈るからといって沖の遠くに舟は出さないよ。敷栲の枕をともにした人が忘れられないなあ。
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この歌は藤原宇合(ふじはらのうまかひ)が旅先で詠んだ一首。
これもおそらく先の巻一(七一)の文武天皇が難波行幸された時の歌と思われます。

藤原宇合は藤原不比等(ふじはらのふひと)の三男で、他の兄弟とともに後に藤原四兄弟として朝廷の権力を牛耳ることになります(まあ、その後すぐに四人とも天然痘であっけなく亡くなってしまうのですが)がこの歌の時期にはまだ十代前半の若者だったようです(左注の「式部卿」というのも後の冠位)。

そんなまだうら若き藤原宇合が旅先で詠んだ一首なわけですが、この歌については少々難解で、歌の上の句についても「玉藻を刈る海女たちのいる沖には近づかないよ」とする訳があるなど解釈もいろいろと分かれているようです。
まあ、これまでの前後の歌から解釈してこの歌も旅先での不安な心を鎮めようとした旅の鎮魂歌であることは間違いないと思いますし、宇合がまだ結婚もしていない若者であったことを考えると妻の代わりに一晩を共に過ごした女性(遊女か)に心を集中して動揺する心を鎮めようとした歌なのではないでしょうか。

おそらくは旅寝の夜の闇の中で「明日は玉藻を刈るからといって沖の遠くに舟は出さないよ。あの夜敷栲の枕をともにした人が忘れられないなあ。」と、旅の途中で接待を受けた遊女のことを偲んで詠んだ一首なのでしょう。


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万葉集巻一


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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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