万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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巨勢郎女(こせのいらつめ)の報(こた)へ贈れる歌一首〔即ち近江朝(あふみのみかど)の大納言巨勢人卿(こせのひとのまへつきみ)の女なり〕

玉葛花のみ咲きて成らざるは誰(たれ)が恋ひにあらめ吾(わ)が恋ひ思(おも)ふを

巻二(一〇二)
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玉葛のように花ばかり咲いて実がならないのはどなたの恋でしょう。私はこんなに恋しく思っていますのに。
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この歌は大伴宿禰安麿(おほとものすくねやすまろ)が贈った巻二(一〇一)の歌に、巨勢郎女(こせのいらつめ)が返した返歌。
大伴安麿の「美しい葛のように実のならない君への恋だ」との切ない訴えに対して、「実らせてくれないのは貴方のほうでしょう。私はこんなに恋しく思っていますのに…」と、逆に安麿のほうこそ恋を実らせてくれないのでしょうと責めています。
安麿が実らない恋だと嘆いていたのと同じように、郎女もまた安麿への実らない恋に心を焦がしていたわけですね。

この歌も、万葉集の時代の男女も現代人とおなじようにお互いの気持ちを推しはかりかねて恋に苦しんでいたのだということがよく分かる一首のように思います。
この後、安麿と郎女の二人はめでたく結ばれて夫婦となりました。

ちなみに巨勢郎女は近江朝廷側の大納言であった巨勢臣人(こせのおみひと)の娘で壬申の乱での敗北後に臣人の一族はすべて配流となってしまいましたが、郎女だけは安麿との婚姻していたおかげで配流を免れたようです。
大伴安麿も巨勢郎女もお互いの気持ちを量りかねていた理由のひとつは、自分たちの家系が大友皇子側と大海人皇子側というやがては敵同士になるであろうと予想される複雑な関係もその原因だったのかも知れませんね。


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万葉集巻二


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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