万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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舎人皇子(とねりのみこ)の御歌一首
丈夫(ますらを)や片恋ひせむと嘆けども醜(しこ)の丈夫なほ恋ひにけり
巻二(一一七)
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立派な男子ならば片恋などしないと自分の身を嘆くのだが、ふがいない男子の僕はなおも恋しく思うのです。
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この歌は舎人皇子(とねりのみこ)が詠んだ恋歌で、次の巻二(一一八)の歌の舎人娘子に贈った贈答歌です。
舎人皇子は天武天皇の皇子(第六皇子?)で淳仁天皇の父。
また、日本書紀の編集を総裁したことでも知られます。
「丈夫(ますらを)」とは武勇に優れた立派な男子のことですが、そんな「丈夫ならばみっともなく片恋に悩んだりしないとものだぞ!と自身に言い聞かせるのだけれども、それでもふがいない自分は恋に悩むのです」との、なんとも人間らしい告白が魅力の恋歌ですよね。
舎人皇子は天武天皇の皇子の中でも最も長生きした皇子で、後に奈良時代になってそれまで大きな権力を握っていた新興貴族の藤原不比等が亡くなったあと長屋王とともに皇親政権を樹立します。
しかし、その後は徐々に藤原家寄りになっていき長屋王の変では逆に新田部皇子とともに長屋王を糾問して自害に追い込みます。
さらには藤原不比等の娘の光明子を立后させ、藤原四兄弟政権の成立に協力するなど実に現実主義で老練な活躍をすることとなるのですが、この歌を詠んだ頃の彼はまだ若く世間に揉まれていない純粋さと繊細さが感じられますね。
「丈夫(ますらを)」は勇敢で豪傑な男子のイメージをもつ言葉ですが、舎人皇子のように自身のみっともなさを認めることが出来てなお片恋の切なさを歌に詠める人物も、僕にはある意味で充分「丈夫(ますらを)」な気がします。
この歌を読んだだけでも、舎人皇子という若い皇子の愛すべき人間性が充分に伝わってくる一首ではないでしょうか。
日本書紀(再刻版)
明日香村埋蔵文化財展示室の展示品。
舎人皇子は日本書紀の編集を総裁したことでも知られます。
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万葉集巻二
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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