万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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大津皇子(おほつのみこ)の宮の侍(まかたち)石川女郎の大伴宿禰宿奈麿(おほとものすくねすくなまろ)に贈れる歌一首〔女郎は字(あざな)を山田の郎女といへり。奈麿宿禰宿は大納言兼大将軍卿の第三子なり。〕
古(ふ)りにし嫗(おみな)にしてやかくばかり恋に沈まむ手童(たわらは)の如(ごと)
〔一(ある)は云はく、恋をだに忍ひかねてむ手童の如〕
巻二(一二九)
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もう分別のつく老女だと思っていたのにこんなにも恋に沈んでいます。まるで幼女のように。〔一(ある)は云はく、恋心を抑えられないのでしょうか。まるで幼女のように。〕
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この歌は大津皇子の侍の石川女郎(いしかわのいらつめ)が大伴宿禰宿奈麿(おほとものすくねすくなまろ)に贈った恋歌。
石川女郎という名の人物は万葉集に何人も出てくるので区別がつきづらいのですが、この歌の女郎は大津皇子の侍とあることからあるいは巻二(一一〇)で草壁皇子が恋歌を贈った人物と同人でしょうか。
自ら「嫗(老女)」と詠っていることから巻二(一一〇)の歌のころからずいぶん時間がたった後の歌かと想像できますが、この頃にはもう大津皇子も草壁皇子もこの世を去っていたのかも知れませんね。
そんな年老いた身(実際にはそれほどの歳ではなかったと思われますが)と自覚していながら、大伴宿禰宿奈麿に対する抑えきれない恋心を訴えたなんともいじらしい一首ですよね。
この歌に対する大伴宿禰宿奈麿の返歌は万葉集に集録されていないことから実らなかった恋だったのかも知れませんが、いつの時代も恋とは分別の外にあるものなのだと感じさせてくれる素敵な一首だと僕には感じます。
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万葉集巻二
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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