万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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或る本の反歌に曰はく
石見(いはみ)なる高角山の木(こ)の際(ま)ゆもわが袖振るを妹(いも)見けむかも
巻二(一三四)
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石見の高角山の木々の間から私が袖を振るのを妻は見ただろうか
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この歌は巻二(一三二)の歌の異伝で、内容もほぼ同じものとなっていますがこちらでは「妻は見ただろうか」との過去形で詠われています。
万葉集にはこの巻二(一三四)の歌の後にももう一首、巻二(一三二)の歌の異伝として巻二(一三九)が集録されており、この人麿の石見での一連の歌がいかに人口に普及して伝わっていたかが想像できますね。
おそらくは巻二(一三一)の長歌から巻二(一三三)までの歌がもとの形に最も近いものであり、そこから口伝などを経ていろいろな本に集録されていく過程で形を変えて伝わって行ったのではないでしょうか。
こちらの巻二(一三四)の歌は、もととなったであろう巻二(一三二)の歌と比較すると過去形として詠われているために抒情性が高まって視としての洗練がなされているように感じられます。
ただ、その反面で今この瞬間に妻を思っているという呪術性は大きく欠けてしまって、この歌本来が持っていた旅の鎮魂歌としての力は完全に削がれてしまっているようにも僕には感じられます。
歌が伝承されてゆくときに言葉や表面上の表現のみが洗練されて、その歌が詠まれた時に作者が込めた願いが薄れてしまう典型的な例と言えるかも知れませんね。
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万葉集巻二
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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