万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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大宝元年辛丑(しんちう)、紀伊国(きのくに)に幸(いでま)しし時に結び松を見たる歌一首〔柿本朝臣人麿歌集の中に出づ〕
後(のち)見むと君が結べる磐代の子松(こまつ)がうれをまた見けむかも
巻二(一四六)
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後に見ようと君が結んだ磐代の松の若芽を、君はまた見ただろうかなあ。
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この歌も謀反を企んだとして絞殺された有間皇子の魂を慰めた鎮魂歌で、長忌寸意吉麿(ながのいみきおきまろ)の巻二(一四三)と趣が似ていることから柿本朝臣人麿歌集に収録されていたものを編者(大伴家持か?)が並べて併記したもの。
柿本朝臣人麿歌集はその名の通り柿本人麿が編集した歌集で、人麿自身の作や朝廷などで人麿が収集した歌を中心に編さんされていたものですが現存していないために詳しいことは不明です。
大宝元年は長忌寸意吉麿たちが巻二(一四三)の歌を詠んだ持統四年よりも十年ほど後にあたるので、あるいは長忌寸意吉麿の歌を念頭に置いて人麿が詠み直したものかも知れませんね。
この手の鎮魂の挽歌は亡くなった人の魂を慰めて鎮める呪文のようなものであり、内容が似通っていることは問題ではなかったのです。
「後に見ようと君が結んだ磐代の松の若芽を、君はまた見ただろうかなあ」との、有間皇子(有馬皇子)の詠んだ巻二(一四一)の歌に追和した一首となっていますが、この時代の人々がいかに有間皇子の悲劇を心に留め、またその怨念を恐れていたかがこの歌からもよくわかることかと思います。
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万葉集巻二
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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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