万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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天皇の崩(かむあが)りましし時に、大后(おほきさき)の作りませる御歌一首
やすみしし わご大君の 夕されば 見(め)し賜(たま)ふらし 明(あ)けくれば 問ひ賜ふらし 神岳(かむおか)の 山の黄葉(もみぢ)を 今日(けふ)もかも 問ひ給はまし 明日(あす)もかも 見(め)し賜はまし その山を 振り放(さ)け見つつ 夕されば あやに悲しび 明けくれば うらさび暮らし 荒栲(あらたへ)の 衣(ころも)の袖(そで)は 乾(ふ)る時もなし
巻二(一五九)
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あまねく国土をお治めになるわが大君が夕べには見て賜い、朝には言葉をお掛けになる神の丘の山の黄葉を、今日もまた声をお掛けください。朝にはまたご覧ください。
私はその山を遠くに見ながら夕暮れになれば不思議に悲しくなり、朝になれば寂しく暮らし、荒栲のような衣の袖は涙で乾く時がありません。
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この歌は天武天皇の崩御された時に沙羅羅大后(後の持統天皇)が詠まれた挽歌です。
壬申の乱で大友皇子の近江朝廷を倒し、飛鳥浄御原宮で即位された天武天皇も、その後十五年ほどでこの世を去られます。
この「神岳」は飛鳥の「神なび」のことで、ミハ山かもしくは雷丘あたりでしょうか。
(神なび参照)
そんな「天武天皇が夕べにはご覧になり朝には声をお掛けになる神岳の黄葉。その神岳を遠くに見ていると天皇のことが思い出されて涙が乾く時がありません…」との、大后が亡くなった天皇の魂に語り掛けるなんとも悲しげな鎮魂の挽歌ですね。
前半の「今日もまた声をお掛けください。朝にはまたご覧ください。」との語り掛けには、天武天皇の魂に対して永遠にご覧になってくださいとの願いが込められています。
肉体は失われ空蝉では会うことは出来なくとも、魂はそこに存在しているのだとの確信のようなものがこの表現からも感じられますね。
天武・持統天皇陵。
明日香村にある天武天皇のお墓には、大后の持統天皇も一緒に葬られています。
天武・持統天皇陵解説。
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万葉集巻二の他の歌はこちらから。
万葉集巻二
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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