万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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反歌二首

妻もあらば採(つ)みてたげまし佐美(さみ)の山野(の)の上(へ)のうはぎ過ぎにけらずや

巻二(二二一)
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ここに妻がいたならば摘んで食べさせてもくれただろうに佐美の山の野に生えている嫁菜(よめな)はもう時期を過ぎてしまっているよ。
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この歌は柿本朝臣人麿(かきのもとのあそみひとまろ)が讃岐の国の狭岑島(現在の香川県坂出市)を訪れたときに倒れていた行路死者を見て詠んだ挽歌で、先の巻二(二二〇)の長歌につけられた反歌。

「うはぎ」は植物の「嫁菜(よめな)」のことで、「もし旅人の妻も一緒にいたのなら野に生えている嫁菜を君に食べさせてくれただろうに、いまはもうその嫁菜も時期を過ぎているよ」との死者の魂への語り掛けの挽歌ですね。
おそらくは時機を逸してしまっている嫁菜に、もはや救うことの出来ない行路死者自身の命も重ねて見ているのでしょう。

人麿の敏感な感性にはきっと行路死者の魂や家で待つこの旅人の妻の姿がありありと感じられて、まさに我が事のように思わずにはいられなかったのでしょうね。
人麿もまた自分も早く旅路から帰って妻に逢いたいと願ったことでしょう。


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万葉集巻二


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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