万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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丹比真人(たぢひのまひと)〔名闕(か)けたり〕の柿本朝臣人麿の意(こころ)に擬(なそ)へて報(こた)へたる歌一首
荒波に寄りくる玉を枕(まくら)に置きわれここにありと誰(たれ)か告げね
巻二(二二六)
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荒波に運ばれて来る玉を枕のそばに置いて私がここにいると誰か妻に告げてくれるだろうか。
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この歌も柿本朝臣人麿(かきのもとのあそみひとまろ)が石見国(現在の島根県の西半分)で亡くなったときのもので、詞書によれば丹比真人(たぢひのまひと)が人麿の死後に人麿の意を酌みその立場になって詠んだ歌とのことです。
「荒波に運ばれて来る玉を枕のそばに置いて私がここにいると誰か妻に告げてくれるだろうか」との、死後の人麿が妻を思って詠んだ一首の形を取っているわけですが、先の巻二(二二四) や 巻二(二二五)の依羅娘子(よさみのをとめ)の歌と連なる内容となっていることから、これらの一連の歌がすべて人麿伝説としての伝承歌のようですね。
丹比真人(たぢひのまひと)については、「名欠けたり」となっていますが、この歌の人物はおそらくは丹比真人笠麿(たぢひのまひとかさまろ)でしょうか。
(万葉集には他にも「丹比真人」とのみ記されている人物が何度か出てきますが、すべて同じ人物かは不明。)
柿本人麿は生前、丹比島の庇護を受けていたようで、人麿の死後、丹比人たちが人麿伝説を伝え伝承してきたようですね。
そんな伝承歌としての細部のあいまいさや想像で付け足されたであろう脚色というヴェールは感じられるものの、この歌などからも人麿の死の真相がそのヴェールの向こう側にかすかに透けて見える気がします。
以上が万葉集に伝えられている人麿の死に関する歌物語です。
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万葉集巻二
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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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