万葉集入門
万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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或る本の歌に曰はく

高円(たかまと)の野辺の秋萩(あきはぎ)な散りそね君が形見(かたみ)に見つつ思(しの)はむ

巻二(二三三)
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高円山の野辺の秋萩よ散ってくれるな。君の形見として見ながら偲ぼう。
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この歌も志貴皇子(しきのみこ)が亡くなったときに詠まれた挽歌で、巻二(二三一)の歌の異伝となっています。
おそらくは巻二(二三一)の歌が口伝などで伝誦される過程で、何らかの理由で享受者によって変更が行われたのでしょうね。
ただ、この手の異伝の歌がほとんどの場合、語句が少し変化するだけで歌の意味そのものは変わらないのに対して、この巻二(二三三)の歌は三句目以降が巻二(二三一)の歌と大きく異なりほぼ別の歌と言っていいほどに変化しています。

巻二(二三一)の歌が、高円山の秋萩に対して「いたづらに咲きか散るらむ見る人無しに」と、誰も見る人がなくなったと詠っているのに対して、こちらでは詠み手が秋萩を「志貴皇子の形見として見ながら偲ぼう」とほぼ逆の意味になっています。
まあ、万葉の時代の挽歌というのは亡くなった人の魂を慰めるのが目的であるので、その根本部分さえ変わっていなければ伝誦される過程での多少の語句や意味の変化はあまり気にされなかったのかも知れませんね。


秋萩。


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万葉集巻二の他の歌はこちらから。
万葉集巻二


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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