万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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或る本の歌に曰(い)はく
居明かして君をば待たむぬばたまのわが黒髪に霜はふるとも
右の一首は古歌集の中に出づ。
巻二(八九)
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一晩を寝もせずに明かして君を待っていよう。私の黒髪に霜が降りようとも。
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この歌は巻二(八十七)の異伝。
磐姫皇后(いはのひめのおほきさき)物語の連作の一首である巻二(八十七)の歌から独立して伝承される過程で、独立した恋歌として歌の語句が洗練されていったものと思われます。
具体的には巻二(八十七)の歌が「ありつつも君をば待たむ(ここに居続けてあなたを待っていよう)」と連作の前後の歌を意識して詠まれているのに対して、こちらの巻二(八十九)歌では「一晩を寝もせずに明かして君を待っていよう。」と一首だけで読んでも充分に意味の通じる内容に変化しています。
また、下の句の「黒髪に霜…」についても巻二(八十七)の歌が白髪になるまでという意味を持たせているのに対して、こちらの巻二(八十九)の歌では夜の冷える中で相手を待って髪に霜が降ったというそのままの意味合いが強いようですね。
万葉集の中にはこのように同じ歌でも伝承の過程で語句が変化していったものがいくつか並列して集録されていますが、それらの歌のそれぞれの語句が洗練されたり変化していった過程を想像しながら読むのもまた楽しみのひとつのように思います。
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万葉集巻二
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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