万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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春日王(かすがのおほきみ)の和(こた)へ奉(まつ)れる歌一首

王(おほきみ)は千歳(ちとせ)に座(ま)さむ白雲(しらくも)も三船の山に絶(た)ゆる日あらめや

巻三(二四三)
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大君は長寿でいらっしゃいましょう。白雲も三船の山から絶える日などありませんよ。
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この歌は先の巻三(二四二)の弓削皇子(ゆげのみこ)が三船山にかかる雲を見て詠んだ歌に対して、春日王(かすがのおほきみ)が唱和して返した一首。
春日王は志貴皇子の子に同じ名前の人物がいるなど日本書紀や続日本紀などに複数人確認されていますが、この歌を詠んだ春日王は後の世の志貴皇子の子とは別人でこの歌の時点ではかなりの高齢の人物であったと思われます。
巻三(二四二)の弓削皇子の歌に対してその場ですぐに返したような内容になっていることから、この春日王も持統天皇の吉野行幸時に従駕していたのでしょう。

弓削皇子の「三船山にかかる雲もいつまでもそこに居られないように、僕もこの世に長く居られるとは思えないよ」との歌に対して、「皇子は長生きされるでしょう。白雲も三船の山から絶えることなどありませんよ。」と弓削皇子の弱音とも取れる歌に対して励ましの歌で唱和したわけですが、「白雲だって三船山から絶えることなどありませんよ」とはなんだか少し無理のある励まし方のようにも思えますね(笑)

ただ、この時点でまだ二十代ほどの若さだった弓削皇子に対して、春日王はかなり高齢であったようなので「自分のような年寄りに比べれば若い皇子はまだまだ長生きできますよ」との率直な思いの歌だったのではないかとも思えます。
実際、弓削皇子はこの後亡くなってしまうのですが、それよりもわずかですがひと月ほど前にはこの春日王も亡くなっていたようです。
そんな、後の出来事を知ってから読むと、少し不思議な運命を感じさせてくれるこの二人の唱和歌ですね。


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万葉集巻三


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万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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