万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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石川丈夫(いしかはのめへつきみ)の和(こた)へたる歌一首 名闕(か)けたり

沖(おき)つ波辺波(なみへなみ)立つともわが背子(せこ)が御船(みふね)の泊り波立ためやも

右は、今案(かむが)ふるに従四位下石川宮麿朝臣慶雲年中に大弐(だいに)に任(ま)けらゆ。又正五位下石川朝臣吉美侯(きみこ)、神亀年中に小弐(せうに)に任けらゆ。両人の誰(いづ)れこの歌を作れるかを知らず。

巻三(二四七)
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沖の波や岸辺の波が立ったとしてもあなたさまの御船の泊りには波など立つはずがありませんよ。
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この歌は筑紫に派遣された長田王(をさだのおほきみ)が水島に渡る船上にて詠んだ先の巻三(二四六)の歌に、石川丈夫(いしかはのめへつきみ)が答えて詠んだ一首。
題詞に「名闕けたり(名欠けたり)」とあるように、この石川丈夫が誰なのかははっきりとしないようですが、左注によると雲年中に大弐に任じられた石川宮麿(いしかはのまろ)か、もしくは神亀年中に小弐に任じられた石川吉美侯(いしかはのきみこ)のどちらかではないかと思われます。
(歌の内容の呪術性からするとあるいは少し古い時代の石川宮麿のほうかも。)

そんな石川丈夫の詠んだ一首ですが、長田王の「さあ水島へ上陸しよう。波よ立たないでくれ、くれぐれも。」との巻三(二四六)の歌に対して、「沖の波や岸辺の波が立ったとしてもあなたさまの御船の泊りには波など立つはずがありませんよ。」と、長田王の不安を鎮めようとした内容となっています。
もちろんこれは長田王に対して答えた内容ではありますが、石川上丈夫自身の心の不安を鎮めようとして詠んだ一首でもあったのでしょうね。

また、それと同時に長田王の巻三(二四六)の歌にさらに言霊の力を重ねることによって船の無事の着岸を実現しようとした祈りの言葉でもあったのでしょう。


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万葉集巻三


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万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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